FACTFULNESS(ファクトフルネス)――データから世界を知る

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FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

「統計に基づいて世界のありのままの姿を見ていこうとする一冊です。
「世界はどんどん悪くなってきている」などの思いこみを人間の本能ともからめて考えてきます。」

『この本は世界の本当の姿についての本であり、あなたについての本でもある。』(イントロダクション)

【本書の紹介】データから世界のありのままの姿を知る

【著者の紹介】
著者のハンス・ロスリング氏は医師として世界を回りタイム誌が選ぶ世界で最も影響力の大きな100人に選ばれたこともある著名人です。
本書では、あらゆる国、地域を回ってきて人々が世界のことで勘違い、思い込んでいることについて解説しています。
同じく著者のオーラ・ロスリングとアンナ・ロスリング・ロンランドはハンス氏の家族で、本書の執筆にも3人で協力し書き上げていったため著者も3人になっています。

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世界のことについてどのくらい知っていますか?

FACTFULNESS(ファクトフルネス)は、冒頭に世界のことについて3択クイズがあります。
問題内容は人口や教育普及率、環境問題など現代社会に関する問題です。

3択クイズは、
「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」
「世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?」
など学校の授業などで聞いたことがありそう事柄です。

しかし、1万2000人に行ったオンライン調査で、平均正解数は12問中2問(約15%)であることが紹介されています。
(わたしも初めて読んだ時にクイズに挑戦しましたが、ほぼ同じくらいの正答率でした。)

さらに、世界中のあらゆる職業の人、エリートと呼ばれるような人たちでもさほど正答率が変わらないことも紹介されています。
3択であてずっぽうに答えても平均正答率は33%になるはずなのに平均を大きく下回っている。
つまり、世界のことを多くの人がきちんと把握できていないことが紹介されています。

著者のハンス氏は最初、世界の知識や正しい情報を広めていけばいいと考えていましたが、
話した相手にきちんと世界の情報が伝わっていないことに気づきます。

その原因として、人間の本能としてドラマチックすぎる世界の見方をしてしまう、世界はどんどん悪くなってきていると考えてしまうなど、人間の脳の機能の問題と深く関わりがあることにハンス氏が気づきます。

ファクトフルネスでは、そうした世界への思いこみについて、人間の本能を10個にわけて考えて事実に基づいて考えていくことの重要さと、現在の世界の姿を紹介していく本です。

これまでわたしたちがなんとなく思い込んでいた世界の様子について、
データに基づく解説と人間が思い込んでしまうさまざまな本能について紹介し世界と自分に向き合っていきます。

世界はよくなってきている

本書・ファクトフルネスでは人間のさまざまな思いこみをさせる本能との向き合い方に触れています。

なぜ思いこみをしてしまうのかという解説に、具体的なエピソード(著者のハンス氏の体験談など)やさまざまな本能との向き合い方を各章の末尾にまとめています。

一例として、
2章ではネガティブ本能(世界はどんどん悪くなってきているという思いこみ)について、
世界の暗い話はニュースになりやすいが、明るい話はニュースになりにくいことが挙げられています。

例えば世界の貧困についてだと、過去20年で極度の貧困状態にある人の割合が約半分になったことがデータからわかっています。

しかし、20年という時間をかけて少しずつ減少していったこと(目をひくような派手な変化ではない)、
ニュースでは貧困に苦しむ人々の数が変わらないような印象を与えるように取り上げられていることなどから、
「世界はどんどん悪くなってきている」というネガティブ本能で思いこみをしていることが解説されています。

人間のさまざまな本能による思いこみや誤解を知ることで、自分を取り巻く世界の見方や自分との向き合い方も変わってきます。

世界の問題について、まずはデータに基づいて世界を見て世界と向き合っていこうとする一冊です。

コロナ禍の現代の問題を予測していた―グローバルリスクとの向き合いかた

FACTFULNESS(ファクトフルネス) の10章では心配すべき5つのグローバルなリスクとして下記の5つがあげられています。

心配すべき5つのグローバルなリスク
・感染症の世界的な流行
・金融危機
・第三次世界大戦
・地球温暖化
・極度の貧困

2019年末から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行や、
感染症流行による経済危機などまさに今、わたしたちの世界で起きているリスクが的中されています。

新型コロナウイルスの影響でさまざまな影響や変化がありました。

本書で触れているような人間のネガティブ本能や恐怖本能を刺激するような感染へのリスクから偏見や誤解に関するニュースもたびたび見られました。

誤った情報から買いだめでマスクなどの品薄状態になる、誰でもかかる可能性があるのに感染症にかかった人を批判するような風潮が生まれてるなど、だれもが身近で生活の変化を感じたはずです。

新型コロナウイルスの流行などの世界的な危機と直面した時わたしたちはどうすればいいのか。

ファクトフルネスでは、感染症の世界的な流行などの5つのグローバルなリスクに対しての心構えとしてこのように締めくくられています。

「恐がらなくていいとも言えない。でも、頭を冷やして世界の人々と力を合わせ、こうしたリスクを減らす手助けをしてほしい。(中略) 本物の問題に注目し、どうしたら解決できるかを考えよう。」

本能のままに不安や思いこみによって行動するのではなく、冷静に必要なことをしていく。
この心構えの大切さをファクトフルネスでは説いています。

書籍情報

【タイトル】
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
【著者】
(著) ハンス・ロスリング , オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド
(訳) 上杉周作,関美和

【ページ数】400ページ
【シリーズ名】
【出版社】日経BP
【出版年】 2019年1月11日
【価格】¥1,800+税

ISBN-10 : 4822289605
ISBN-13 : 978-4822289607

【目次】
イントロダクション
第1章 分断本能「世界は分断されている」という思い込み
第2章 ネガティブ本能「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
第3章 直線本能「世界の人口はひたすら増える」という思い込み
第4章 恐怖本能「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
第5章 過大視本能「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み
第6章 パターン化本能「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み
第7章 宿命本能「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
第8章 単純化本能「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
第9章 犯人捜し本能「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み
第10章 焦り本能「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
第11章 ファクトフルネスを実践しよう
ファクトフルネスの大まかなルール
おわりに

【キーワード】世界,社会問題,心理

2021/01/19 一部編集

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