大人こそ読んでみたい児童書――ハッピーバースデー命かがやく瞬間(とき)

読み終わった本

こんにちは、ライターのニカイドウです。

今まで読んだ本の中でこの一冊は衝撃だったって本はありますか?

わたしは子どもの時に読んだ、「ハッピーバースデー命かがやく瞬間(とき)」という本が今まで読んできた本の中で一番衝撃を受けました。

ハッピーバースデー 命かがやく瞬間(とき) (フォア文庫)

「生まれてこなければよかった」という母親からの一言で傷ついた主人公のあすかが心の傷を癒し、成長していく物語です。

元は児童書(小学校高学年向け)でベストセラーになり、その後改訂版も出し、大人が読んでも感動すると有名になった本です。

本当にこの本が好きで、繰り返し何回も読みブックカバーがすり切れるほど読んだ記憶があります。

今から20年以上前1997年に出版された本ですが、今でも社会問題になっているような、「虐待」「学校のいじめ」などにも触れている作品です。

今回は、「ハッピーバースデー命かがやく瞬間(とき)」の紹介をしていきます。

生きていくための優しさがつまった言葉がたくさんある

ハッピーバースデーは「おまえ、生まれてこなきゃよかったよな。」という言葉から始まる物語です。

この一言がきっかけで主人公のあすかは自分の声が出せなくなるほど精神的にショックを受けます。

その後、今までの自分の態度を悔いてあすかを支えようとする兄や、あすかの心の傷に気づいた担任や祖父母たちによってあすかは心の傷を癒し成長していきます。

声を失い傷ついたあすかし対し、登場人物たちはあすかに言葉をそれぞれかけていきます。

母親から離れ、祖父母の元に向かうようにした兄の直人は
「いつかは自分で自分を表現しないと、ジメツしかないぞ。いつまでもさ、穴ぐらにかくれているわけにはいかないんだよ、あすか。」
「じいちゃんの力を借りて、自分をとりもどすんだ。自分の足で立ち上がるんだ。」
と激励します。

祖父母たちは、
「安心していいんだよ。じいちゃんはあすかを守るためなら、なんでもするよ。あまえていいんだ。じいちゃんはあすかにあまえられるのが、うれしいんだよ。」
「あすかちゃん。ばあちゃんは、あすかちゃんが大好きよ。」
と言葉をかけます。

言葉で傷ついたあすかは、同じく優しい言葉によって心の傷を癒やしていきます。
そして、心を癒やし声を取り戻したあすかが、今度は周りの人たちを助けるようになります。

過激な受験競争が起きている学校に疑問を感じていたあすかの兄は、
「いつだって、どこだって、その気にさえなれば変われるのが人間なんだって。」
「だから、人間は勉強するんでしょ。おにいちゃん?」
という言葉によって、親の希望している進路とは違う自分の進路を進むことを決心します。

転校した学校で、いじめられていて「死ぬ方法がわからなかった」と言ったクラスメイトには、
「死ぬなんて悲しいこと、考えないでよ。命は自分だけのものじゃないんだよ。」
と声をかけクラスを変えていこうと奔走するようになります。

言葉で傷ついたあすかが、
言葉で心を癒やし、
言葉で人を助けていくようになる。

タイトルの「ハッピーバースデー」も、「生まれてこなければよかった」という言葉を乗り越えて主人公のあすかが自分に向けて言った一言です。

他にもここには書き切れないくらいたくさんハッピーバースデーの中には、あすかをはじめ登場人物たちの優しさが詰まった言葉がたくさん登場します。

物語の中に出てくる優しさのつまった言葉は、子どもでもわかるような表現や言葉遣いです。

素朴な言葉使いですが、生きていくために、幸せや愛に気づかされるような言葉がたくさんあるからこそ、子どもだけではなく大人にも読まれる一冊になるのではないかと思います。

一人一人の登場人物の心情に深くふれている

ハッピーバースデーの中で起きる出来事は、現実の家族や学校で起こりえるような問題にたくさん触れています。

物語のキーパーソンである主人公・あすかの母親の場合
→子どものころの孤独やトラウマと向き合えないまま大人になってしまった。
主人公・あすかにきつく当たるのは姉に似ていて過去のトラウマを思い出すから。
子どもの頃は、重い病気の姉が家族の関心の中心で、妹の母親は二の次だった。(いわゆるきょうだい児)

読者は主人公・あすかや母親、あすかの周りの人たちの視点からストーリーを読み進められる作りになっています。

ハッピーバースデーの物語の特徴で、「なぜそういう行動をするのか?」という理由や一人一人の生活環境が語られているんですよね。

一見、理由もなく娘のあすかを精神的に苦しめていた母親にも葛藤や苦しみがある。 

あすかに優しかった祖父母たちも、かつてはあすかの母親である静代に姉の闘病生活で辛い思いをさせてしまったことに気づき悔やむなど、一人の人間の多面に触れられています。

ハッピーバースデーでは、そういう「自分が見ている相手の部分が全てではない」ってことに気づかされる人物性があります。
そういう家族や学校の問題に関わる人たちの、リアリティのある感情や行動の変化が物語の魅力だと思います。

この本を読み社会福祉の勉強と仕事をしました

ハッピーバースデーを子どものころ読み、物語の中で出てきたカウンセラーやヘルパーなど社会福祉関係の仕事に興味を持ちました。

そして、大学では社会福祉を選び、ヘルパー・ケースワーカーの仕事も約3年半ほどしました。

今読み返すと、ハッピーバースデーの物語の中で起きた出来事はすごく理想的な解決をしていて、現実ではもっと時間がかかったり中々解決しないような問題も素早く解決していくように感じます。

でも、ハッピーバースデーでの中で語られたような他人や自分との向き合い方は決して間違っていないと思います。

本は児童書で大人なら1~2時間あれば読み切れるくらいです。

何か悲しいことや傷ついたことがあったとき、前に進む勇気や心を癒やしてくれる一冊です。

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